恐怖のミートソース缶

　それは、食事付きのレディングの寮から自炊のロンドンの寮に移って最初の頃のこと。夕食に、簡単にスパゲッティーでも作って食べようと思い、スパゲティーをゆでつつ、近くのスーパーで買ってきたミートソースの缶詰を開けた途端、私は悶絶しそうになった。

　ミートソースの中にグニャグニャとのたくっている白く細長い物体。それがスパゲティーであると了解するまでには少しばかりの時間が必要であった。そう、それは「ミートソースの缶詰」ではなく「スパゲティー・ミートソースの缶詰」だったのである。

　ゆであがりつつあるスパゲティーと、この「スパゲッティー・ミートソース」とをどうしたらいいのか、しばし呆然とするのであった。

　ちなみに缶詰のスパゲティーの麺はやはりグチャグチャであった。もっとも、イギリスでは至る所でグチャグチャのスパゲティーが供されており、同じコースのイタリア人の学生は「イギリス人はアルデンテを知らないんだ！！」と憤懣やるかたない表情で語るのであった。

(2001.5.1)